Web制作会社でWebディレクターとして働いているaoと申します。
「ディレクター」というとTV業界の印象を持つ方も結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
私がWeb業界に興味を持ったばかりの頃、Webディレクターという職業をあまり意識することが無くデザイナーを目指していました。
しかし、実際に業界内に入ってみるとWebディレクターがいなくては案件を進めることができないほど重要なポジションの人だということを理解し、今ではその職種で仕事をしています。
さて、それではWebディレクターと呼ばれる人たちが、実際にどのような仕事をしているのかご紹介したいと思います。
はじめに断っておきますが、企業によってWebディレクターの定義が異なる場合があるため、あくまで一例となりますので、予めご了承ください。
Web制作会社/デザイン会社等におけるWebディレクター
そもそもWebディレクターは、Web制作会社やデザイン会社に所属するか、発注元の企業(商品の製造・販売や、サービス展開をしている事業会社、または広告代理店)に所属するかで仕事の内容が少し変わってきます。
今回フォーカスを当ててご紹介するのは、顧客から委託を受けるWeb制作会社やデザイン会社に所属しているWebディレクターについてです。
主な業務は、Webサイトの制作や運営ですが、関連する広告物の制作やキャンペーンの企画をしたり、時にはコンペに参加するための提案準備も行います。
なお、Webサイトの制作・運営や広告物の制作に携わる人たちは多岐にわたりますが、どのような職種が存在するかについては、別の記事でまとめていますのでご覧ください。
顧客折衝
プロデューサーや営業担当と業務を分ける場合もありますが、多くのディレクターはクライアントへの連絡や交渉なども行います。
それは、ディレクターが現場監督的な立場にいてプロジェクトの全容を把握しているため、適切な判断がしやすいからです。
スケジュールや予算に関する交渉はもちろん、トラブルが発生した場合も迅速に事態を終息するための対策を考え、クライアントへの報告や制作スタッフへの指示を行う必要があります。
そのため、いかなる時も状況を冷静に把握し、優先順位を決めて決断することができる力、そして関係者が納得感を得られる説明をする力、信頼してもらえる立ち居振る舞いをする力が問われます。
コンテンツ、キャンペーンなどの企画
クライアントよりプロジェクトの相談を受け、発注を受ける前に企画提案を行うケースも少なくありません。
例えば、食品メーカーにおいて自社製品の購入促進を図るため、自社製品を活用したレシピサイトの構築をして欲しいと相談を受けた場合、Webサイトの企画案や認知向上のための施策を企画し提案するようなケースがあったとします。
企画を行う前に、関連する情報を把握しなければ適切なプランを立てることができないため、Webサイト制作や商材に関わる情報(Webサーバ/ドメインなどインフラ等に関わる情報や、自社商品のターゲット層、過去施策の内訳や効果など)のヒアリングを行うこともディレクターの役割です。
そのため、企画提案においてどのような情報が必要になってくるのか逆算して考えられる必要があります。
企画提案はプランナーやデザイナーとともに準備を行うこともありますが、プロジェクトの規模によっては一人で提案準備を行うこともあります。
予算管理
企業を維持していくためにはプロジェクトにおける利益の確保が必須です。
その反面で、クライアントは限られた予算の中で最大限の成果を求めてきます。
そのため、受託制作における金額の相場感を理解し、クライアントも納得ができるような条件で見積もりを行いつつ、自社も利益が確保できる絶妙なバランスで受注できるような金額設定を行う必要があります。
無事に受注できたとしてもプロジェクトがスタートしてから仕様変更の要望が発生することがあります。
要望を実現しようとすれば予算に収まらないといった場合、少ない工数で要望を実現する方法がないか検討し代案を提示するなどしてクライアントに向き合う姿勢を示すことで顧客満足度を向上されられるか否かもディレクターの腕の見せどころです。
ドキュメント作成(WebサイトのUI/UX設計、要件定義)
受注前の企画書だけでなく、受注後もドキュメント作成は多々発生します。
Webサイトなどの仕様を策定していく段階(要件定義など)では、Webサイトの構造はサイトマップやディレクトリリスト、UI/UXはを画面構成図やモックアップなどを作成します。利用するドメインやサーバ構成、対象ブラウザやブレイクポイントなど、一つ一つの仕様をドキュメント化して残すことも重要なポイントです。
要件定義においてクライアントに承認してもらった仕様を残しておくことで、作業が進行した後にクライアントから要件定義の時と異なる指示が出ても証拠として提示することができ、自分たちの身を守ることにもつながります。
また、クライアントに対するドキュメントだけではなく、制作指示するスタッフへのドキュメントも作成することが多いため、ディレクターはドキュメント作成を行う機会が非常に多いです。
Microsoftoffice系のツールは基本的に利用が必要ですので、最低限使えるようになっておきましょう。
また、画面構成を作成する場合はAdobe XDなどのツールを利用することも増えてきていますので、転職を検討されている方は、希望する会社でどのようなツールを利用しているか確認されたほうが良いと思います。
進行管理
プロジェクトを期日までに完了できるよう、だれがいつまでにどの作業を完了しておくべきなのかスケジュールを作成し、各所への指示・進行管理を行うことはディレクターの重要な仕事です。
スケジュールを作成するためには、プロジェクト全体の流れを理解し、どのような流れで進行することが効率的か考えることができる必要があります。
長期的なプロジェクトであれば時間的猶予があり、何かトラブルが発生しても吸収できる余地がある場合が多いですが、短期間で進行するプロジェクトなどは関係者たちのスケジュールを一日単位で管理する必要があるため、だれかが遅延するだけで納期に間に合わない可能性が出てきます。
例えば、デザインのために必要な写真素材をクライアントから提供してもらう必要があるものの天候の都合で期限までに受領できない可能性があるなど予想できていれば、期限に間に合わない場合は一旦パース画像でデザインして公開、差し替え可能なタイミングで撮影素材に変更するなどの案内を事前にすることで関係者達の不安も軽減されます。
トラブルにつながりそうな部分がどこか事前にイメージし、関係者を調整しておくことで効率的な進行ができるだけでなく、クライアントからの信頼にもつながります。
アクセス解析、改善提案
Webサイトの運営に関わっていると「CVR改善」という言葉を嫌でも聞く機会があります。CVRとは「Conversion Rate(コンバージョンレート)」の略で、コンバージョン(商品の購入や申込みなど)を達成した割合を表す指標です。
Webサイトの成果を判断する評価軸として分かりやすいため、クライアントの担当者はCVR改善を目標として日々行動している方もいらっしゃいます。
Web制作会社はパートナーとしてクライアントとともにWebサイト運営を行いつつ、Web制作の専門家としてCVRのボトルネックになっている部分を特定するためにGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用した解析作業を行います。
コンバージョンまでの流れのどこで離脱してしまっているか、ユーザーにとって理解しやすいページ構成になっているか、コンバージョンの導線は目に付きやすいデザインかなどの判断をデータを基に判断し、改善案を検討しクライアントへ提案、実行していきます。
まとめ
Webディレクターの仕事は内容が多岐にわたります。
はじめは先輩からの指示で部分的に業務に携わり、少しずつ視野を広げていくことで、やがて全体を俯瞰してみることができるようになります。
はじめに勉強する事としておすすめなのは、Web制作の仕組みを理解しておくことです。
ディレクターになれば自分で制作することはありませんが、制作できる知識がないと制作スタッフへの適切な指示ができませんし、設計や企画などにおいても苦労することになります。
Web業界への転職を検討している、またはWeb業界に入ったばかりでどんな勉強をすればいいのかわからない方は、以下の記事をご覧いただければ幸いです。